映画「ムーンライト」

アカデミー賞受賞作。LGBT映画が初めてアカデミー賞をとったということで話題になった、ので、一度見てみないと!と思い。

 

こんな人にオススメ

  • LGBT問題に関心がある(直球)
  • 自分が何者か深く考えてしまった経験がある(もしくは現在進行形で)
  • わかりやすさを求めない、自分で考えるのが好き

 

まずしいゲイ?の黒人シャイロン(字幕ではシャロン、発音はシャイロンに近いらしい)が、少年から大人になるまでを、3人の俳優が演じた作品。母親の麻薬中毒やゲイであることによるイジメ、などを抱えながら、少年時代の父親のような大人との出会い、幼馴染の少年ケヴィンとの関係の変化を経験し、彼はどうなるのか。

 

以下ネタバレあり。

 

 

これは…LGBT映画なんだろうか…というのがイマイチわからなかった。というのは自分自身の問題もあるんだけども、主人公がなんで周囲の子どもに「おかま」と言われてしまうのか、なんで幼馴染のケヴィンがそんな好きなんか、あんまよくわからない…というのが正直なところ。ケヴィンのセクシャリティもよくわからない…。ふつうにバイなんか?

 

なお、男女だったらわかるわけではないです。このお話、極端に「説明」が少ないの!ちょっと前に、「彼らが本気で編むときは」を見たけど、あの「わかりやすさ」に比べて、これはほんっとにわからない。

で思ったのが、これは1個人のことをわからなくてもいいのかもな、と。「オカマって何?」と少年時代のシャイロンは聞くのですが(そして聞かれた大人のフアンは、「それは差別語だ。ゲイだとしてもオカマと呼ばせるな」(要約)と言うのですが)、そう、最初は自分を規定する概念ってなにもないんですよね。セクシャリティに限ったことではなく。そういう自分を規定するものの「わからなさ」を、視聴者も共有してたのかな、と思えなくもなく。

 

一番泣いたのは第2部、高校生のシャイロンが殴られて(しかも寄り添えたと思った直後のケヴィンに、本意ではなく)、カウンセラー?かなんかに、「気持ちはわかるわ、誰がしたのか言ってほしい」みたいなこと言われて抵抗するシーン。彼は自分で立ち向かうことを選ぶ。これは、子供時代のシャイロンがケヴィンに言われてた、「タフさ」の表れだね。でも、こんなタフでいないといけない環境にシャイロンが置かれないといけない理由はないので、それが辛かった。こういう時に自分しかいないということ。もうフアンはいないし、母親はあんなだし、フアンのパートナーと接してたら彼女が母親にボロクソ言われる。ケヴィンは当事者だしさ。

この第2部で、「泣きすぎて水滴になりそう」とシャイロンは言う。この言葉が美しすぎて悲しかった。

 

ラブストーリーとしては第3部、大人になったシャイロンはヤクの売人になってるんだけど、ならざるを得ない環境なんだけど、ケヴィンと再会して、ケヴィンにはそれを咎められる。咎めるんだけど、拒否はしない。ケヴィン…悪い男だな…。二人の関係がどうなるかわからないんだけど、だからハッピーエンドってのは楽天的すぎるんだけど。

 

だから…なんだろうな…。なにか明確なメッセージを受け取れたのかというと難しくて、自分まだまだだなーって。でもなんだったんだろーなーとふわふわしといて、いつかわかるといいな、と今は思っておく。

映像表現(カラーリストを入れて、映像の色彩をコントロールしているとか、カメラの揺れや音声や色の示すもの)はすごいいろいろ…考えられてるんだなって他のレビューを読んで思ったので、勉強になった。

 

ふわっと幸せになる映画、かもしれないな。